真は私の隣を歩いてくれた。
私と同じ歩幅で、あの笑顔を向けながら…。
どっちも嫌いじゃない。
「利砂子は今彼氏いる?」
「いたら仕事なんかしてませんよ」
「ははっ、そりゃそーか」
「笑い事じゃないですよ!」
青木先輩は昔はめちゃくちゃなことをやってた人だったけど、今は全然真面目な社会人になっていた。
だから久しぶりに再会したこの日、何度か思わず吹き出してしまった。
「久しぶりだし、どっか飯食いに行くか?!奢ってやるよ」
「気前いいですねー!じゃぁ日空けときます」
そんな約束のあと、上司になる人たちに挨拶にまわり、仕事内容を説明された。
会社は全然違うけれど、この「仕事場」という空気が少し懐かしいような気がした。
鳴り響く電話の音。
その受話器を取り、応対する声。
女性のヒールや男性の靴音。
コピー機の規則正しい音。
夏の暑さも和らいできた秋の始め、学生の子たちとは無縁のこの場所で新しい生活が始まる。
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